ブドウ果実の初期発育の制御による裂果抑制について調査した。無加温全面被覆と部分被覆栽培の‘藤稔'について、裂果の発生様相を調査した結果、裂果はベレゾーン期頃から発生し、全面被覆および部分被覆栽培での発生率は、1.7%および3.7%であった。裂果は主に成熟期の前半に果底部で発生し、後半には果頂部にもわずかに発生した。ベレゾーン後の果皮の硬度は、全面被覆栽培に比べ、部分被覆栽培でより低い傾向があった。 次に‘藤稔'の果実肥大と裂果に及ぼす生長調節物質の影響を調査した。満開期にGA25ppm、満開10日後GA25 ppmCPPU5ppmの単用あるいは混用処理した結果、成熟開始後、GA単用区、GA・CPPU混用区では全果実の12%が裂果したが、CPPU単用区では2%であった。果実肥大はGA・CPPU混用区で最も優れ、CPPU単用区がこれに次いだ。収穫期には果皮硬度、可溶性固形物およびアントシアニン含量は処理間に差はなかった。GA単用およびGA-CPPU混用区では小果梗周辺部に亀裂が増加したが、CPPU単用区では少なかった。小果梗周辺の亜表皮細胞はGA区に比べCPPU単用区で小さかった。 以上の結果から‘藤稔'のGA処理果とCPPU処理果における裂果発生率の差異の一因として、果皮の組織構造の違いが関与していることが示唆され、満開後のCPPU単用処理は、果実肥大促進の効果をもたらすと同時に裂果を抑制させるための有効な手段となりうる可能性が示された。
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