わが国に自生する園芸的に重要と考えられる野生ギク(アシズリノジギク、ナカガワノギク、サツマノギク、リュウノウギク、キクタニギク、シマカンギク、イソギク以上7種)について、自然日長下で栽培し基本的生育特性を調査した。分枝の発達する位置と長さにより種独特の草姿が決定されることが明らかとなった。次に開花に対する日長、温度反応を調査した。25℃ファイトトロンで10、12、14時間日長を与えたところ、総ての種で12時間以下の日長で開花し、14時間では発蕾が著しく遅れ開花しなかった。また、10月より最低夜温10、15、20℃に設定したハウス内で自然日長を与えたところ、10℃以上のいずれの温度でも開花するグループ、15℃以上で開花するグループ、20℃以上でのみ開花するグループに分けられた。また、自然日長下の花芽分化過程を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの種も頭状花序の発達過程はよく似ていた。また小花の分化過程では、種によって花筒の頂部を閉じる前に雄ずいを分化するタイプと花筒の頂部が閉じた後に雄ずいを分化するタイプに大別できた。スプレー系栽培ギクを子房親として野生種7種との交配を試みたところ、キクタニギクを除く6種との間で交雑種子が得られた。ナカガワノギクについて自生地の分布調査を行った。分布域は1950年代に報告されたものと基本的に一致したが、周辺環境の変化によりかなり狭くなっていることが明らかとなった。現地から採取された36系統を自然条件下で栽培したところ、草姿、葉形、花形、開花期等に大きな種内変異が認められた。
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