1.^<14>C-BAの多芽球体への集積および植物体再生時の^<14>C-BAの動態Pterisの多芽球体を^<14>C-BA(benzylaminopurine-8-^<14>C:40μCi/mmol)を添加した培地で4週間培養した。培地に与えた^<14>C-BAのうち16.4%が多芽球体組織内に存在した。これは多芽球体生体重が培地の0.8%に過ぎないことから、多芽球体は生長とともに積極的に^<14>C-BAを吸収していることを示唆している。 ^<14>C-BAを吸収・増殖した多芽球体をBAフリー培地に移植すると、4週間で放射能活性は移植時の47.2%に低下し、28.3%は培地に放出していた。多芽球体が生長するため、組織内の濃度は培養開始時の1.3%にまで低下した。多芽球体組織内の放射能の42.0%はブタノール相分画に、58.0%は水相分画にみられた。ブタノール相分画は遊離のBAと同定されたが、水相分画はまだ未同定でだが、結合型BAと推察された。 2.植物体再生時における多芽球体の^<14>C-BAおよびIAA含量の経時変化 BAフリー培地に移植後、4週間目まで毎週サンプリング行い、多芽球体中の^<14>C-BAおよびIAA含量を測定した。その結果、^<14>C-BAは1週間後には移植時の28.7%に低下しており、葉形成が肉眼で確認できる2〜3週間目には、それぞれ10.4、4.5%に低下した。一方、IAAは移植後5日目に若干増加したが大きな変動はなく、開始時の33.7から23.0ng/gFWと、葉形成にともない徐々に低下した。 以上の結果から、Pteris多芽球体はBA添加培地で培養中はBAの取り込みを継続しながら増殖し、再生培地(BAフリー培地)へ移植すると、一部を培地へ放出しながら、自己の生長とともに組織内のBA濃度を低下させ、増殖時の1/10程度に濃度が低下すると葉形成が始まるものと推察された。葉形成とIAA含量の間には密接な関連はみられなかった。
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