1. 窒素施肥量の相違が葉や根の炭水化物含量に及ぼす影響を数種の落葉果樹について調査した。その結果、窒素施肥量の増加とともに、葉と根の窒素含量、クロロフィル含量、可溶性炭水化物含量は増加した。これに対して葉のデンプン含量は窒素施肥量が増加するに従い低下した。 2. イムノブロット法によってRuBisCOタンパク質を検討した。窒素施肥量の増加に伴ってRuBisCO含量は増大した。窒素無施肥区の場合、葉緑体にデンプンが充満する結果RuBisCOは葉緑体の周辺部に存在するようになった。 3. 葉のクロロフィル蛍光を測定した。光合成回路のPSIIの量子収量を検討するためにFv/Fm値を測定した。クロロフィル蛍光値(Fv/Fm)には窒素施肥量の影響が顕著にみられた。その結果、無窒素区で明らかに低くなった。Fv/Fmの日変化から窒素含量の少ない葉では昼間の低下が大きかった。このようにクロロフィル含量の低い無窒素区の葉ではPSIIの量子収量が低下していることが推察される。 4. マンゴー葉の葉齢に伴う細胞構造と光合成活性の変化を検討した。若い未熟葉をDAPIで染色したところ、同じ細胞に赤く励起した葉緑体と薄い赤色や黄色い葉緑体が混在していた。気孔は展葉まもない時期には未発達であり、葉面積が28.6cm2に達したころにいっせいに分化した。RuBisCO含量も未熟葉に比べて成熟葉では明らかに増加した。葉は拡大成長が終了したころからクロロフィル含量の増加が著しく、Fv/Fm値も高くなった。若い、未熟葉では、成熟葉に比べて、昼間のFv/Fm値の低下率が高かった。今後、葉齢に伴う環境耐性の機構を検討する予定である。
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