近年の農業環境の変化によって、農業に期待されるのは食料・原材料の供給だけでなく、農業が果たす環境形成機能やや、林地や草地がもつ生物種の多様性維持における役割がクローズアップされてきている。農林地は様々な環境形成機能を持ち、農地の周辺にモザイク状に存在する半自然的な植生が生物種の多様性維持機能を果たしてきたと思われる。本研究は、農地・林地およびその周辺に半自然的に成立している植生の環境的役割を評価し、その適正な管理手法を明らかにすることを目的に行ったものである。 1. このため、我が国における農林地およびその周辺に成立する植生の種類構成や群落的に比較した。その結果、農地の周辺には、立地条件(特に水田との位置関係の結果としての土壌の乾湿条件)、農作業にともなう踏みつけの強弱や、刈り取り頻度、農地利用が放棄された後の時間の長短、等に応じて極めて多様な植生が存在していた。地域間の相違は比較的小さかった。このことが我が国の農村景観が共通性を持つ要因であると考えられる。農林地周辺の植生や景観は、地域内で極めて多様、広域的には比較的均一であることが明らかとなった。 2. 農地周辺での拡大が問題となっている竹林をとりあげ、大阪府泉南地域を対象として、過去の地形図(1/25000)を用いてその変遷を調査した。その結果、竹林の面積は、1947年から1970年では、186.8haから185.1haへ幾分減少したが、1970年から1993にかけては、207.0haに増加した。 3. コンテナーを用いて畦畔草地のモデル群落を形成し、チガヤ、ヨモギ、オオジシバリの生育に及ぼす草刈り頻度の違いの影響を調査した。その結果、チガヤやオオジシバリは、刈り取りに対する耐性が大きく、ヨモギはやや耐性が弱いことが明らかになった。
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