カンザワハダニのチャとクズ個体群間、ナミハダニの黄緑(G)型と赤色(R)型間およびクワオオハダニの本州BとCグループ間における生殖不和合性にゲスト微生物のWolbachiaがどのような関わりを持っているかを交配実験と抗生物質処理によって検討した結果、次のことが分かった。 1.カンザワハダニのクズ個体群の雌とチャ個体群の雄との間に起こる不和合性(雌が出現しない)は、チャ個体群に感染しているWolbachiaによるものではなかった。つまり、チャ個体群と和合する地域個体群の中にWolbachiaに感染していない個体群があったこと、および抗生物質処理にしてWolbachiaを除去しても和合性の回復が見られなかったことによる。 2.ナミハダニのGとR型は両方向で不和合性を示し、雌率が減少する。微生物に感染していたG型に抗生物質を処理しても和合性は回復しなかったので、Wolbachiaの中立系統に感染していると考えられた。 3.クワオオハダニの本州BとCグループ間では、Cを雄にした場合にのみ不和合になる。この原因は、Cグループの鶴岡と富山個体群Wolbachiaに感染しているためであり、抗生物質で微生物を除去すると和合性が回復した。また、鶴岡と富山個体群の間では両方向不和合性を示したが、雄から微生物を除去すると和合したので、これらの個体群は異なるWolbachiaの系統に感染していると考えられた。今後、鶴岡と富山個体群に感染している微生物のDNA塩基配列を決定し、微生物の系統間差と既知の系統との位置関係を明らかにする。
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