日本産のハダニ20種316個体群と海外から液浸標本として得た2種10個体群について、Wolbachia感染の有無をPCR法で検討した結果、4種55個体群がWolbachiaに感染していることが分かった。つまり、ナミハダニ・黄緑型と赤色型、カンザワハダニ、ナミハダニモドキ、クワオオハダニである。このうち、クワオオハダニの4個体群だけが生殖不和合性を誘起するWolbachiaに感染しており、残りの個体群はすべて(海外個体群を除く)不和合性を起こさない中立系統に感染していた。このように、ハダニでは中立系統への感染がまれではなかった。 Wolbashiaに感染しているクワオオハダニの5個体群のうち、鶴岡、富山、花山および春野個体群は生殖不和合性を誘起するWolbachiaに感染していたが、仙台個体群は中立系統に感染していた。たとえば、Wolbachiaに感染していない阿見個体群と鶴岡・富山個体群の交配では一方向不和合性が見られた。しかし、阿見個体群の雌と抗生物質のリファンピシンを処理した鶴岡・富山個体群の雄との交配は和合したので、これらの個体群間の不和合性はWolbachiaに由来することが分かった。鶴岡と富山個体群は両方向で不和合性を示したが、抗生物質処理個体を使っても和合性が回復しなかったので、これらの不和合性は、核遺伝子同士の不親和性によると考えられた。現在、4個体群に寄生しているWolbachiaの系統関係について検討を進めている。
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