本研究では難純化一本鎖RNAウイルス感染植物体から抽出されるウイルス由来の複製型二本鎖RNAから遺伝子のクローニングを行い、病原ウイルスの遺伝子に対応するcDNAを得ることを第一の目的にしている。平成9年度は本研究の初年度であり、イチゴマイルドイエロ-エッジウイルス(SMYEV)とカンキツトリステザウイルス(CTV)を取り上げ、とりあえずはクローニングと塩基配列の決定を目指した。なお、SMYEVはいまだにウイルス粒子さえ確定されていない病原である。SMYEVとCTVのいずれも感染葉よりCF-11セルロースカラムを用いてウイルス由来と考えられる二本鎖RNAが得られ、cDNA合成とクローニングを行った。得られたクローンについては塩基配列を順次決定した。その結果、CTVでは少量のサンプルから抽出した複製型二本鎖RNAからPCR法を用いてウイルスの約2万塩素もある全ゲノムRNAのどの部分でもcDNA合成が可能であることが判明した。そこで、得られたクローンからCTVのM15A株の全塩基配列を決定した。CTVの全塩基配列決定は本研究が世界で3番目の快挙である。イチゴでも、得られた二本鎖RNAからcDNAクローンを得られ、その塩基配列を決定し、PCR法で検出を可能とした。次年度は、得られた塩基配列を基に大腸菌で融合タンパク質としてウイルスの外被タンパク質や非構造タンパク質を発現し、ウイルスを検出するための抗血清の作製を目指す。
|