本研究では、現在までに鈍化が困難なために抗血清が作製されていなかったり遺伝子がクローニングされていない一本鎖RNA植物ウイルスを研究対象とし、感染植物体から抽出されるウイルス由来の複製型二本鎖国RNAから遺伝子のクローニングを行い、病原ウイルスの遺伝子に対応するcDNAを得ることを第一の目的にした。平成11年度は本研究の最終年度であり、カンキツトリステザウイルス(CTV)とキュウリ黄化ウイルス(CYV)を取り上げ、クローニングと塩基配列の決定、および大腸菌で融合タンパク質としてウイルスタンパク質を発現し、ウイルスを検出するための抗血清を作製した。CTVとCYVのいずれも感染葉よりCF-11セルロースカラムを用いてウイルス由来と考えられる二本鎖RNAが得られ、cDNA合成とクローニングを行い、得られたクローンについては塩基配列を順次決定した。その結果、CTVでは少量のサンプルから抽出した複製型二本鎖RNAを用いて強毒株と弱毒株の全塩基配列を決定した。また両分離株を識別するため、大腸菌でCTVの非構造タンパク質を発現し、抗血清を作製したが、残念ながら識別することはできなかった。しかし、すべてのCTV分離株を2系統に識別するプローブの作製に成功し、少量の感染葉からCTVを検出できた。CYVでも、得られた二本鎖RNAからcDNAクローンが得られ、その塩基配列を決定し、PCR法で検出を可能とした。さらに得られた塩基配列から、CYVが外国ですでに記載のあるbeet pseudo-yellows virusと同じであることを明らかにした。
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