昨年度に報告したように、マンノース結合型イネクレチン(MRL)は主要なpI4.85、pI4.74のイソレクチンに加えて、pI4.66、pI4.56、pI4.44、pI4.30の計6つのイソレクチンからなり、それぞれが3量体であることを明らかにした。ポットで育苗した健全イネのcDNAライブラリーからMRLの主要なイソレクチンであるpI4.85遺伝子(MRL4.85)をN末端アミノ酸配列に基づいたDNAプローブとMRLモノクローナル抗体を用いて選抜できた。本遺伝子はN末端アミノ酸配列の相同性から見いだされた塩・干魃ストレス誘導性のsalT遺伝子とcDNAならびにゲノムDNA、推定アミノ酸配列ともに非常に高い相同性を示した。本遺伝子はゲノムサザン解析からゲノム中に1ケ所しか存在しないものの、洗浄条件をゆるくするといくつかのバンドが出てくることから、類似した遺伝子が存在するものと推定された。しかし、MRL4.85以外のイソレクチン遺伝子を同定することはまだできていない。本遺伝子はsalT遺伝子と同様に、アブシジン酸、ジャスモン酸、塩、傷害、いもち病菌感染、干魃、37℃高温処理で誘導されるものの、オーキシン、エチレンでは誘導されなかった。MRLモノクローナル抗体を用いた免疫染色から、MRLはイネ葉の維管束系、表皮細胞、葉肉細胞に広く分布し、いもち病菌感染部位周辺に集積する傾向が観察された。さらに、いもち病菌感染までにMRL抗体を処理したり、MRL抽出条件でもある0.15MNaCl処理すると、感染が助長され、逆にMRLと同様の糖特異性を示すCocanavalinAを同様に処理すると、逆に感染が阻害された。以上の結果と昨年度の研究成果とを考えあわせると、MRLはストレス誘導性のタンパク質でいもち病菌等の感染に対する抵抗性発現に深く関わっていることが推察された。
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