植物生育促進菌類(plant growth promoting fungi PGPF)を植物の根部に処理すると、植物に対して生育促進効果を示すばかりでなく発病抑制効果も示す。この発病抑制効果は各種土壌病害に対してばかりでなく地上病害にも見られた。このことから、抑制効果の一つとして全身抵抗の誘導が示された。本研究では、PGPFのPenicillium属菌GP17-2における誘導抵抗性発現のメカニズムを明らかにすることを目的とした。活性酸素は、植物細胞において異物に対する過敏暉反応の始動シグナルとして知られている。この活性酸素は病原菌の感染やエリシター物質の処理によっても放出され、この放出の値が高いほど、高いエリシター活性を持つことが知られてりる。そこでPenicilliumGP17-2の培養ろ液をキュウリ果実に処理し、ルミノール発光により活性酸素の放出量を測定した。この培養ろ液は濃度によって活性が異なり、希釈されるごとに活性が低くなった。このことから、培養ろ液の活性は濃度に依存していると思われた。また、培養ろ液の分画物を作成し、エリシター物質の同定を試みた。その結果、いずれの分画物においても活性が見られたが、特にタンパク質除去画分や、分子量200万以上の糖質画分において高い活性が見られた。一方、脂溶性画分では活性が低かった。次に、キュウリの胚軸部分を用いて植物組織のリグニン化を見たところすべての分画物でリグニン化が認められた。このリグニン化と活性酸素の放出量は抵抗性の発現に深く関係すると考えられた。
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