ツマグロヨコバイのN-メチルカーバメート剤及び有機リン剤抵抗性の主要因が、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の薬剤感受性低下であるこことは既によく知られている。本研究では、個体毎にAChEの薬剤感受性を簡単に測定する方法を確立するとともに、本方法が、AChEの薬剤感受性低下による抵抗性のモニタリング法として有用であることを示した。更にin vitroでのAChE阻害において逆相関交差抵抗性を示す薬剤の組合せのスクリーニングを行い、N-メチルカーバメートと有機リン剤のmonocrotophosとの間に逆相関交差抵抗性の関係があることを発見した。しかし、殺虫試験の結果からは、この関係を確認することは出来なかった。そこで、N-メチルカーバメート剤抵抗性遺伝子を感受性系統に導入したRmc系統を育成し、同様な試験を行った結果、N-メチルカーバメート剤とmonocrotophosとの間には、逆相関抵抗性の関係があることが確認された。野外の抵抗性系統を用いた殺虫試験で逆相関交差抵抗性が認められなかったのは、野外抵抗性系統における高活性のアリエステラーゼ(AliE)の結合蛋白としての作用によるものと考えられた。各系統ツマグロヨコバイの交配実験から、6種のAChEアイソザイムを確認した。また、感受性及びN-メチルカーバメート剤抵抗性ツマグロヨコバイ頭部よりAChEを分離精製し、それぞれ3000倍に精製されたAChEを得ることが出来た。これらの生理生化学的性質については、両者で大きな違いが認められた。今後は、AChEの阻害における逆相関交差抵抗性機構を分子レベルで明らかにする予定である。
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