Microsphaera属はErysiphe属Erysiphe節から進化したと考えられてきた。我々はErysiphe属Erysiphe節とMicrosphaera属との系統関係をより明らかにするため、11種類のErysiphe属菌(Erysiphe節)と16種類のMicrosphaera菌のrDNA ITS領域の塩基配列データを用いて、近隣結合法と最大節約法により系統樹を作成した。二つの系統樹とも両属の近縁性を支持した。しかし、Erysiphe属菌とMicrosphaera属菌はそれぞれ単系統のクラスターを形成せず、互いに混ざり合った複数の小クラスターを形成した。このことは両属の分化が1回の出来事によって起こったのではなく、2回以上にわたって独立に起こったことを示唆した。両属を区別するための形態的指標である付属糸は閉子のう殻による同菌の越冬に重要な役割を果たしている。したがって、主に草本植物に寄生するErysiphe属菌と主に木本植物に寄生するMicrosphaera属菌では、その生息場所(ここでは寄主植物)の違いによる選択圧によって付属糸の形態が環境順応的に変異した可能性がある。このことは付属糸の形態に収斂的な進化が起こった可能性を示唆しており、付属糸の形態が必ずしも本菌の系統関係を正確に示すとは言えない。
|