研究概要 |
うどんこ菌科全体の系統関係を解析する目的で、15属33種類のうどんこ病菌について18S,5.8S,28S rDNAおよびスペーサー(ITS)領域の塩基配列を決定した。供試した全てのうどんこ病菌は明瞭な単系統群を形成し、単一の祖先種から派生したことが示された。本菌にもっとも近縁な姉妹群はホネタケ目のMyxotrichaceaeであった。Uncinula septataがうどんこ病菌全体の基部に位置し、残りすべてのうどんこ病菌は一つの大きなクレードを形成した。このクレードはアナモルフにより明瞭に特徴づけられる5つの主要な系統群に分割された。Pseudoidium系統群は、Erysiphe(Erysiphe節)、Microsphaera、Uncinula、Uncinuliella、Brasiliomyces、Typhulochaetaの6属で構成される大きな系統群で、Pseudoidium型のアナモルフを共通に有していた。Euoidium系統群はErysiphe(Golovinomyces節、Galeopsidis節)とArthrocladiellaの2属で構成され、フィブローシン体を欠くEuoidium型アナモルフを有していた。endophytic系統群はPhyllactinia、Leveillula、Pleochaetaの3属で構成される(半)内部寄生菌の群であった。fibrosin系統群には、Sawadaea、Cystotheca、Podosphaera、Sphaerothecaの4属が含まれ、フィブローシン体を有するEuoidium型アナモルフで特徴づけられた。monocot系統群はBlumeriagraminis1種のみで構成され、分生子基部が膨らんだ特徴的なアナモルフと単子葉植物への寄生性により明瞭に特徴づけられた。以上のように、うどんこ病菌の系統関係はアナモルフの特徴とよく一致し、テレオモルフとは必ずしも一致しなかった。現在、アナモルフをより重視した分類体系の再構築を検討している。
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