変異イネ関口朝日の切り取り薬鞘に親和性いもち病菌レースを接種し、24時間後にこれを取り除き非病原菌あるいは非親和性いもち病菌レースを接種した。すると、非病原菌はイネ葉鞘細胞に容易に侵入し、菌糸を数細胞にまで伸展させる場合もあった。しかし、非親和性いもち病菌レースの場合は対照区に比べると若干の伸展が見られるが、非病原菌で見られたような明確な受容性の誘導現象は見られず、むしろ親和性菌により一旦誘導された受容性が拒否性へ変換されたような結果となった。このような、受容性から拒否性への変換に非親和性いもち病菌レースのエリシターが関与していることが考えられた。そこで胞子発芽液を用いて、一旦葉鞘に誘導された受容性が拒否性へと変換されるか否かを、非病原菌や非親和性レースの感染行動により調べた。即ち、親和性レースの接種により受容性を誘導したイネ葉鞘にイネ葉鞘内で発芽させて得た非親和性いもち病菌の胞子発芽液を減圧浸透処理あるいは24時間注入した後、非病原菌を接種した。その結果、侵入率は蒸留水処理葉鞘では明らかに増加し、受容性の誘導が観察された。しかし、発芽液処理葉鞘では侵入率は有意に低下し、受容性から拒否性への変換現象が観察された。また、葉鞘内発芽液を健全葉鞘に処理後、親和性いもち病菌レースを接種すると侵入率や菌糸伸展度が著しく抑制された。しかも、この活性は、イネといもち病菌の関係が親和性及び非親和性のいずれの組み合わせから得た発芽液においても認められた。しかし、プラスチック容器内で発芽させて得た発芽液を用いた場合には、このような変換現象あるいは拒否性誘導現象は観察されなかった。発芽液中の拒否性誘導を示す因子は、熱安定で、分子量5000以下の水落性物質であった。
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