Potyvirus属のカブモザイクウイルス(TuMV)は世界中に分布し、主にアブラナ科植物に病害を起こす。TuMVゲノムは5^1末端から、5^1非翻訳領域、P1タンパク質遺伝子、ヘルパー成分-プロテアーゼ(HC-Pro)タンパク質遺伝子、P3タンパク質遺伝子、6K1タンパク質遺伝子、細胞質封入体タンパク質遺伝子、6K2タンパク質遺伝子、核内封入体a-ゲノム結合タンパク質遺伝子、核内封入体a-ポリメラーゼタンパク質遺伝子、核内封入体b-プロテアーゼタンパク質遺伝子、外被タンパク質(CP)遺伝子及び3^1非翻訳領域の遺伝子を持つ、約10kbの一本鎖RNAである。これらの遺伝子の中でHC-Proタンパク質遺伝子はアブラムシの伝搬性に関与し、感染植物体の中で2量体を形成していると言われている。しかしながら、HC-Proタンパク質の植物体中の動態、即ち植物体の中でどのように蓄積しているのか、また遺伝子領域のどの部分がアブラムシ伝搬性に必要なのか知られていない。 TuMVのHC-Proタンパク質を感染植物体から精製するのは極めて困難なため、HC-Proタンパク質遺伝子の塩基配列を決定後、大腸菌発現ベクターに組み込み、大腸菌内でHC-Proタンパク質を発現させた。精製したそのタンパク質をウサギに免疫し、HC-Proタンパク質に対する抗血清を作製した。その抗血清をプローブとしてTuMV感染植物体内での蓄積を追跡した結果、HC-Proタンパク質はCPに比べて蓄積し、またCPに比べて不安定であることが明らかとなった。また、HC-Proタンパク質遺伝子のアブラムシ伝搬性に必要な遺伝子領域を特定する目的で、タバコモザイクウイルス感染性cDNAをベクターに全長及び欠損HC-Proタンパク質遺伝子を組み込みHC-Proタンパク質遺伝子領域を調査した結果、N末端から30アミノ酸、C末端から67アミノ酸は必ずしもアブラムシの伝搬性に必要でないことが明らかとなった。
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