Xanthomonas属植物病原細菌には宿主に対する病原性ならびに非宿主に対する過敏感反応誘導能を同時に支配するhrp遺伝子群が知られている.このうち、イネ白葉枯病菌(X. oryzae pv.oryzae)では従来、それらの制御遺伝子hrpXの存在が知られていたが、これによって制御を受ける遺伝子の存在は未知であった.そこで、本菌MAFF301237のライブラリーよりこれらのクローニングを行った.その結果、X. campestris pv. vesicatoriaで知られる、hrpA、hrpB、hrpC、hrpD、hrpEおよびhrpFのクラスター構造を形成する遺伝子群のうちhrpEを除くすべてとhrpGをクローン化することに成功し、イネ白葉枯病菌におけるクラスター構造をとるhrp遺伝子群と第2の制御遺伝子hrpGの存在を明らかにした.これらは従来知られた各遺伝子と非常に高い相同性を有し、これらhrp遺伝子がいわゆるTypeIII分泌機構を形成する各コンポーネントをコードしており、Xanthomonas属植物病原細菌に普遍的に保存されていることを明らかにした.これらクラスター構造を取る遺伝子のほとんどはhrpXにより発現制御を受けると推定されている.そこで、塩基配列を完全に決定したhrpD1プロモーター領域について大腸菌を用いて発現されたHrpX蛋白質との相互作用をゲルシフトアッセイにより試みた.従来、HrpXは被制御領域に存在するPIP-Box(TTCGC-N15-TTCGC)に結合すると考えられたが、hrpD1の推定開始コドンより381-375bp上流のPIP-Boxを含む領域との結合実験では明瞭な結果は得られず、他の領域について精査中である.
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