うどんこ病菌は、一般的には閉子のう殻で越冬するとされている、しかし、サルスベリうどんこ病菌(以下サルスベリ菌と称す)は、サルスベリの芽の中で越冬するとされている。したがって、芽の中のうどんこ病菌を検出することで菌の芽内への感染時期や芽への感染頻度に関する知見が得られ、本病菌の生活史を明らかに出来、発生予察の可能も期待できる。そこで、サルスベリ菌の種特異的プライマーを用いた、PCR法によるサルスベリの芽内からのうどんこ病菌の検出法を検討した。 その結果、1)種々のうどんこ病菌の5.8Sを含むITS領域の塩基配列を検討し、4種類のサルスベリ菌(Uncinuliella australiana)の種特異的プライマーを作製した。2)うどんこ病菌を対象とした場合には、サルスベリ菌の場合だけPCRにより増幅し、種特異的プライマーの特異性は検証できた。しかし、3)サルスベリから分離した、付着または内在性の菌類を対象とした場合には、サルスベリ菌以外でもPCRで増幅し、種特異的プライマーは特異的でなかった。この結果は、アーニリング温度を変えても、変わらなかった。そこで、4)制限酵素Xhol Iを用いて、サルスベリ菌とサルスベリに付着または内在性の菌類との増幅産物DNAのバンドの位置や切れ方を比較した結果、サルスベリ菌のDNAのみが制限酵素処理後のDNAバンドの位置が異なっており、本法が有効であることを示した。5)プライマーSA2/SA3の検出限界は、0.0025pgであった。6)サルスベリからのDNA抽出は困難であったが、Hepeseによる洗浄法とDneasy Plant MiniKitを用いたDNA抽出法によって可能であった。さらに、7)うどんこ病罹病と無病のサルスベリ芽からのうどんこ病菌の検出を行う予定であったが、うどんこ病無病のサルスベリを育成できずに、今後の課題として残った。
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