研究概要 |
昨年度の実験結果をふまえ,Rhizobox装置を用いて内生菌根菌資材を施用した栽培試験を行った.また,菌根木を利用した外生菌根菌の接種が,フタバガキ科樹木根圏での養分動態に及ぼす影響について評価した. 1. ヒマワリを供試し,Rhizobox装置を用いた栽培試験を行った.中央の区画に,乾熱処理を施したGlomus Aggregatumを含む内生菌根菌資材を混和する区(-AM区)と無処理の資材を混和する区(+AM区)を設けた.栽培終了後,植物体と各区画の土壌の分析を行った.(1)菌根菌感染率は+AM区で46.1%,-AM区で3.8%であった.+AM区の植物のN,P,K,Zn,Fe含有率は-AM区よりも有意に高かった.(2)P,Zn,Feの土壌中水溶性含量を分析した結果,いずれの区画でも+AM区の方が高かった.(3)中央の区画以外では,+AM区のフォスフォモノエステラーゼ活性が-AM区よりも高い結果が得られた.(4)土壌中の水溶性低分子有機酸含量を分析した結果,中央の区画の有機酸総量が他よりも有意に高い結果が得られたが,-AM区のほうが多量に検出された.また,+AM区に特異的な低分子有機酸の増加は認められなかった.(5)以上の結果から,菌根菌の作用で難溶性リン酸が可溶化された際に,ZnやFeが同時に溶出され,植物による吸収量が増加すると考えられた. 2. マレーシア国サラワク州で行われた,「フタバガキ科Shore macrophylla菌根木による外生菌根菌の伝播試験」で得られた試料の分析を行った.菌根木から20cmの位置に苗を定植することで伝播が認められたが,生育・多量元素吸収量の増大には繋がらなかった.また,重金属元素の吸収量にも影響は認められなかった.これらの結果は,供試土壌の養分量が乏しかったために菌根菌が寄生的に作用したためと考えられた.
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