植物の重要な無機窒素源、アンモニウムが根において継続的に同化され解毒されるために必須な炭素骨格の補充機構を解明することが本研究の目的である。 窒素同化産物の炭素骨格としてC4、C5有機酸が重要と考えられるので、C3化合物からC4化合物の合成反応である暗炭素固定を窒素栄養条件の異なるコムギ根で調べた。アンモニウム処理根では無窒素処理根より4-5倍高い暗炭素固定速度を示し、アンモニウム処理根でもアンモニウム同化を阻害すると暗炭素固定は促進しなかった。この暗炭素固定の促進は炭素骨格の補充に不可欠な反応であることが示された。 暗炭素固定反応を仲介するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)活性はアンモニウム処理根で徐々に増加し、最高で硝酸塩処理根の2倍以上になった。 トマト根からPEPCを比活性が80倍まで精製し、作製した抗体を使用して、アンモニウム供与によるPEPC活性の増加は酵素タンパクのde novo合成に依存すること、およびアンモニウム同化産物であるアミノ酸アミドの供与によってもPEPC活性と酵素タンパク増加がすることが示された。 トマト根の部分精製PEPCは有機酸や酸性アミノ酸により阻害された。特に、リンゴ酸は強力な阻害物質であり、アンモニウム同化に伴い根のリンゴ酸濃度は著減するので、アンモニウム供与は根においてPEPCのin vivo活性を増加させ、暗炭素固定の促進・炭素骨格の補充に寄与すると考察された。
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