根のアンモニウム同化のために消費される炭素骨格の補充に必要な暗炭酸固定の調節におけるアンモニウムの同化産物の役目を評価した。グルタミン合成酵素阻害剤のメチオニンスルフォキシミン(MSX)の存在または不在条件下で異なる期間アンモニウム培地で生育したコムギ植物の根に^<14>Cラベル炭酸水素塩を暗固定させ^<14>C代謝産物を分析した。加えて、根の暗炭酸固定を進める主要な酵素のフォスフォエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)の活性とタンパク質の量を上述の条件で調べた。 アンモニウムを24時間与えたコムギ植物の根では暗炭酸固定速度は顕著に増加し、対照植物の根の速度よりも6倍高かった。しかし、MSXで処理した根では、アンモニウムのみを与えた植物で観察された暗炭酸固定の促進は起こらなかった。このときの根中のアンモニウム濃度はMSX未処理植物のものと同程度であった。顕著な暗炭酸固定の促進を示す根では、クエン酸やリンゴ酸のような酸性代謝産物のプールと^<14>Cラベリングは減少する一方、塩基性代謝産物のプールと^<14>Cラベリングは増加し、グルタミンよりもアスパラギンのラベリングが顕著に増加した。コムギ植物の根において、アンモニウム供与に応答してPEPC活性は増加しPEPCタンパク質が集積した。MSXの存在条件ではPEPCの活性もタンパク質の量も増加しなかった。 以上の結果から、根におけるアンモニウムの一次同化、すなわちその産物の生成は暗炭酸固定を促進させるために決定的なできごとであること、暗炭酸固定の促進は、アンモニウムが供与されたとき、酵素タンパク質の量の増加に基づく根のPEPC活性の増加と一致して起こることが明らかになった。
|