近年、酸性雨などにより土壌の酸性化が進行している。酸性土壌における作物の生育阻害要因に活性化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム(Al)による障害を避けるために、Al耐性植物を作出することが試みられている。本研究では、昨年度のAl耐性糸状菌に引き続き、植物に導入が比較的容易な真核微生物である酵母を単離することを試みた。供試土壌として鹿児島県茶業試験場(知覧町)の黒ボク、アカホヤ、堆積岩、安山岩を用い、培地にはAl 10mM添加pH3.5の麦芽エキス酵母培地を用いた。その結果、黒ボク土から赤色の酵母AT-1、白褐色の酵母AT-2およびAT-3が得られた。同定の結果AT-1はRhodotorula mucilaginosa、AT-2およびAT-3はともにCryptococcus lanrentiiと判明した。得られた結果を要約すると以下の如くである。 1) 寒天培地でのAl耐性濃度は各酵母ともAl 250mMまでの生育した。 2) Al 10mMにおける継代培養も生育が良好で、Al-2およびAl-2は生育速度の増加が認められた。 3) 液体培養でのAl耐性濃度はAT-1では10〜20mM、AT-2では100mM、AT-3では50mMであった。 4) 各酵母とも培地のpHをあげることで、Alの毒性を低下させていないことが判明した。 5) AT-2およびAT-3については、Al無添加で前焙養後もAl添加培地で生育良好であった。 6) 培地1mL当たりの総菌数は、Al 0〜50mMにおいてAT-2およびAT-3では10^8オーダーでAl濃度による有意な差は認められなかったが、他方AT-1ではそれぞれ10^9から、10^8、 10^7オーダーへと菌数が減少した。 7) Al濃度による酵母の明瞭な形態の変化は認められなかった。
|