前年度の結果を受けて、今年度は土壌の荷電特性と粒径分布の変化との関係を明らかにすることを主眼に置いた。土壌中の粘土鉱物を代表するものとして鉱床粘土の中から2:1型鉱物のモンモリロナイト、セリサイト、1:1型鉱物のカオリナイト、ハロイサイト、非晶質鉱物のアロフェンを用い、種々の測定に供した。その結果の概略は以下に示す通りである。 ○ 代表的な永久荷電鉱物であるモンモリロナイトはpHに関わらず100cmolkg^<-1>程度の負荷電を有し、広いpH範囲に於いて粒径分布に変化が見られなかった。 ○ モンモリロナイトと同様、永久荷電性とされているセリサイトの負荷電は顕著なpH依存性を示し、変異荷電的な性質が強いことが示唆された。粒径分布も荷電特性と対応して高pHで細分化が確認された。 ○ カオリナイト、ハロイサイトはpHによって正負荷電ともそれほど大きな変化は示さず、永久荷電的な性質が強いことが示唆された。粒径分布はセリサイトに類似しており、高pHでの細分化が確認された。 ○ 典型的な変異荷電鉱物であるアロフェンの正負荷電はもっとも大きなpH依存性を示し、pH5.5あたりに正味の荷電量がゼロとなる荷電ゼロ点(PZNC)が観察された。粒径分布は酸性領域、アルカリ性領域の両方で細分化が認められた。 今後は乾湿の繰り返しに伴う各土壌粘土鉱物の荷電特性・粒径分布の変化の追跡、既存の指標値である水中沈定容積との対応付け、ζ電位に代表される界面動電現象との関連について明らかにすべく実験を継続中である。
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