代掻き後に水田作土が異常に硬化するいつき現象解明のための理論的基礎とするため、土壌の乾湿に起因する土壌コロイドの界面化学的変化を明らかにすることを目的として、本研究を行った。結果の概要は以下に示すとおりである。 1.水稲を連作した土壌を用いて乾燥・再湛水の模擬実験を行った結果、湛水時に還元処理を行えば、その処理後に全ての土壌において鉄酸化物の全量が減少し、土壌の変異荷電に深く関わっている非晶質鉄酸化物画分が相対的に増加していた。また、還元処理後、土壌有機物が減少し、それが溶脱した鉄と結合していることが推察された。 2.土壌コロイドの荷電特性評価法を確立するために、その代表的粘土鉱物数種を用いて検討した。その結果、代表的な永久電荷をもつモンモリロナイトは広いpH領域で一定した高い負荷電を持ち、カオリン鉱物でも小さいが永久荷電的な性質を示した。アロフェンでは正負荷電とも大きなpH依存性を示してpH5.5付近に荷電ゼロ点が観察された。 3.CSイオン吸着法の土壌コロイドの陽イオン交換特性解明や荷電ゼロ点の測定などへの有効性を確認した。Csイオンを利用した測定法は、従来の測定法と比べてて測定中の汚染が回避でき、正確な測定値が得られるといった利点が認められた。 4.レーザー散乱法による土壌の粒度分布の測定法を検討した結果、従来の沈降法との間に直接的な対応づけは困難であったが、測定データ間には高い相関関係が認められた。 5.動電音響法によって主要土鉱物のぜータ電位を測定法について検討した結果、粘土研究への本法の有効性が認められた。
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