研究概要 |
トウモロコシ(Zea mays L.dentcorn cv. W64A)乾燥種子にプロテイナーゼの高い活性が検出された。この活性は,胚盤を含む胚に局在し,胚乳や糊粉層には検出されなかった。また,同活性は種子の吸水後,2日以内に減少することから,発芽初期に胚で特異的に働く酵素であると考えられた。 ゼラチンを基質として活性染色法を行ない,同活性のアイソザイムの存在を検討した結果,この活性は主要な1種類の酵素に由来していることが示された。この酵素のゼラチンに対する示摘pHは4.5で,阻害剤の影響からPMSFに感受性をもつセリン・エンドペプチダーゼであることが分かった。また,この酵素は金属キレーターであるEDTAによって活性化され,二価金属の添加によってもこの活性化は抑制されなかった。EGTAによっても若干活性化が観察されたが、DETAに比べ弱いものだった。 同酵素活性はin vitroでは非常に不安定で,1価のカチオン,特にナトリウム・イオンによって強い失活が観察され,カリウムではこの失活率は低かった。また比較的強いイオン強度下(300mM以上)では失活の度合いが大きかった。これ以外にも原因不明の失活が続き,同酵素の安定化にはさらなる検討が必要と思われた。 つぎに,同酵素の部分精製を試みた。粗酵素液の45〜65%飽和硫安沈殿を溶解,脱塩することでかなり安定したバンドを検出できるようになった。同様に調製したサンプルをSephacryl S-200ゲルを用いたゲル濾過に供した結果,このプロテイナーゼ酵素の分子量は約85kDであった。イオン交換クロマトグラフィーでは,CM-celluloseには吸着せず,DEAE-SephadexにはpH6.0〜7.0で若干吸着がおこるが、ゲルを通すことで殆どの活性が失われた。
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