2-オキソ酸:フェレドキシン酸化還元酵素は古細菌の代謝の鍵酵素であり、単純な構造ながら、ピルビン酸脱水素酵素超複合体のような複雑な酵素と同じく、CoAに依存した2-オキソ酸の酸化的脱炭酸反応を触媒する。我々が単離・塩基配列決定を行った好酸好熱性細菌Sulfolobusの2-オキソ酸:フェレドキシン酸化還元酵素の、構造機能相関を調べる目的で、平成9年度は、以下に述べるように、遺伝子の発現系を確立した。 大腸菌を宿主とし、T7プロモーターをもつプラスミドに遺伝子を組み込んで発現ベクターとした。本酵素の二つのサブユニットα/βの遺伝子の間には26塩基の重複があるが、この配列のまま発現ベクターに組み込んだもの(ベクターAB)、サブユニットαの遺伝子を切り出して発現ベクターに組み込んだもの(ベクターA)、サブユニットβの遺伝子を切り出して発現ベクターに組み込んだもの(ベクターB)の三つを作成し、通常の方法で宿主に導入し培養中途で誘導をかけた。菌体粗抽出液のSDS-電気泳動により発現を調べた。いずれのベクターからも目的蛋白を著しく産生するものは得られなかった。そこで、宿主大腸菌に、groESLを組み込んだものを用いると、特にベクターA・ベクターBから、目的蛋白を著しく産生されることが分かった。しかし、これらの粗抽出蛋白を混合しても、酵素活性は再構成されなかった。さらに、培養や活性測定前の処理についての条件検討を行ったところ、酵素活性を再構成する事に成功した。今後は、再構成される酵素の性質を調べ、各種変異酵素の作成へと展開する予定である。
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