研究概要 |
本研究では亜硝酸還元酵素及びシュードアズリンについて、正確な立体構造情報に基づいた改変を通して申請者がこれまでに蓄積してきた両銅蛋白質の構造と機能に関する多くの知見に上に立って、硝酸呼吸系に関わる電子伝達蛋白質の全てを単離精製し、それらの蛋白質と亜硝酸還元酵素-シュードアズリン系との蛋白質間相互作用、電子伝達の様式を解析することにより、これまでに明らかになっていない銅蛋白質を有する亜硝酸還元系における電子伝達機構の全貌を明らかにすることを目的として研究を行った。亜硝酸還元酵素は還元型シュードアズリンから電子を受けとって活性型となり機能を発揮する。申請者は、シュードアズリンをアスコルビン酸を用いて還元することにより反応を開始する系を用いているが、アスコルビン酸が硝酸呼吸における生理的な電子伝達物質とは考えにくい。そこでA.faecalis S-6株中にNADHの還元力をシュードアズリンに伝達する活性があるかどうかを調べたところ、A.faecalis S-6株の細胞破砕液にその活性が見いだされた。そこで、硫安沈殿、ゲルろ過等を用いて部分精製を行ったところ、分子量15K,30KのチトクロームCが活性画分に含まれていることが明かとなった。そこで、は当該チトクロームCを含めた電子伝達活性を有する蛋白質の精製を進めた。部分精製品のN末端アミノ酸配列を決定したところ、30Kのものに関しては明瞭な配列の相同姓を示すものが見つからなかったが、15Kのものは硝酸還元系において亜硝酸還元酵素の次のステップである一酸化窒素還元酵素NORの小サブユニットNorCと高い相同性が見いだされた。その部分アミノ酸配列を基に予想される塩基配列からオリゴヌクレオチドプローブを合成して、同蛋白質をコードする遺伝子をクローン化した。塩基配列を決定した結果、この領域にはNORのもう一方のサブユニットNorBを含めて、NORに関与すると思われるnorBCQD遺伝子がクラスターをなして存在することが明らかになっている。
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