本研究の目的は、ヒドロキシルアミン酸化還元酵素の立体構造やヘムの分子内配置を、さらに詳細に検討するばかりでなく、その電子受容体であるチトクロムc-554およびチトクロムc-552の立体構造を明らかにし、マルチヘム蛋白質の分子内及び分子間電子伝達機構の解明を試みることである。平成9年度は、これまで明かにすることができなかったヒドロキシルアミン酸化還元酵素の疎水的なC末端部分の立体構造の決定を試みた。その結果、本酵素のC末端部分は1つの構造をとるのではなく。少なくとも2種類の立体構造をとることを明かとした。この結果は、本酵素のC末端部分が細胞質膜と相互作用することにより固定されると、可溶性部分が回転(あるいは部分的移動)することを示唆する。しかしながら、これまで本酵素は可溶性蛋白質であると考えられており、細胞質膜に存在するという報告はなかった。そこで、本年度はさらに、膜結合性ヒドロキシルアミン酸化還元酵素の精製を試みた。その結果、界面活性剤CHAPSの存在下、イオン交換クロマトグラフィとゲルろ過により膜結合型ヒドロキシルアミン酸化還元酵素の部分精製標品を得ることに成功した。その酵素活性やサブユニット構造を可溶性ヒドロキシルアミン酸化還元酵素と比較したところ、蛋白質的性質に相違は無いが、Vmaxは約2倍であることを見い出した。従って、本酵素はC末端部分で膜に結合することにより、高い電子伝達活性を示すことが示唆された。
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