研究概要 |
(1) トクロムc-554とチトクロムc-552のX線結晶構造解析 一般に、蛋白質の立体構造の解明は、その分子量でなく結晶の性質に依存する。私たちが解明したヒドロキシルアミン酸化還元酵素の分子量は約210,000であるが、分子量約26,000のチトクロムc-554と分子量約12,000のチトクロムc-552については、分子構造は明らかとなっていない。そこで、本年度は両チトクロムcの結晶化を検討した。その結果、チトクロムc-552についてはアモルファス沈澱を得ることができたが、チトクロムc-554については、全く結晶を得ることができなかった。 (2) ルチヘム蛋白質分子内及び分子間電子伝達機構の解明 ヒドロキシアルアミン酸化還元酵素の反応機構に関してはヒドロキシアルアミンが“NOH"を中間体として、亜硝酸に酸化されるモデルが一般に受け入れられている。すなわち、2回の2電子酸化反応が酵素分子内で迅速に進行することがきわめて重要であると考えられる。しかしながら、酵素分子に含まれる電子伝達成分はすべてヘムであり、1電子伝達体である。一方、その電子受容体であるチトクロムc-554もヘムcを4分子持つマルチヘム蛋白質である。本年度は、立体構造の情報に基づきヒドロキシアルアミン酸化還元酵素の電子伝達機構を明らかにすることを試みた。その結果、酵素1分子内にある8個のヘムは、ヘムクラスターを形成しており、3ヘムクラスターが1個、2ヘムクラスターが2個および1ヘムが1個という形で分子内に分布していた。特に、3ヘムクラスター内の1つのヘムは基質結合部位であることから、分子内では3ヘムクラスター→2ヘムクラスター→2ヘムクラスターの2電子伝達がすみやかに進行するヘム配置が保持されていることが明らかになった。
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