トリチル基を有する糖質誘導体の新規な細胞接着およびがん細胞浸潤阻害作用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09660079
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 柏村 直樹 三重大学, 生物資源学部, 教授 (20026412)
• 研究分担者: 稲垣 穣 三重大学, 生物資源学部, 助手 (20242935) ; 西川 司朗 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (50024592)
• キーワード: トリチル基 / 脂溶性糖質誘導体 / 細胞接着阻害 / 好中球 / 抗炎症作用 / P-ジメトキシトリチル基 / シクロデキストリン誘導体 / マウス乳がん細胞

研究概要

最終年を迎えたので、調製した誘導体の動物実験、新規な誘導体の分子設計、および総括を行った。
(1)これまで細胞接着阻害作用が認められ、がん細胞に対する増殖抑制作用が観察されたトリチル誘導体のなかで、脂溶性たより高く、新規な誘導体である、ビス(P-ジメトキシトリチル)α-シクロデキストリン誘導体の高肺転移性のマウス乳がん細胞の転移抑制効果を調べた。その結果、肺への転移阻害と腫瘍増殖抑制作用が認められた。(柏村)
(2)上記誘導体のキー化合物であるトリチルグルコシドと分子の形がにている新規な脂溶性誘導体として、アスコルビン酸のジベンジル誘導体、リグニンのフェノール誘導体、セリンのジフェニル誘導体を調製し、その細胞毒性、好中球接着阻害作用、および内皮細胞接着分子発現阻害作用を調べた。その結果いづれも、阻害作用があることが判明した。これらの誘導体は現在その生理活性について、特許の申請を準備中である。(西川、稲垣)
(3)これまでの研究の総括として、トリチル基を含有する二、三の糖質およびバイオマス関連脂溶性誘導体がはじめて、動物実験によってがん転移阻害作用を示すことがわかった。この作用は、これまでに報告されなかったものであるばかりでなく、トリチル基を有する分子の他の部分は水酸基等の極性基を有している必要があり、各種の分子設計、置き換え、他種のリード化合物への誘導が可能であることを強く示唆した。

研究成果

• [文献書誌] 柏村直樹 他: "フェニルエチニルプリンリボサイドのがん転移抑制作用"日本農芸化学会誌. 75(印刷中). (2001)
• [文献書誌] 柏村直樹 他: "生物資源を活用する新規な制がん剤の研究と三重県における内分泌撹乱物質のバイオレミデーションの調査"三重大学地域共同研究センター研究報告. No.8. 144-150 (2000)
• [文献書誌] 西川司朗: "Synthesis and cytokinin activity of fluoressent 7-phenylethynylimida [4.5-ιPyrimidine and itsribosite."J.Ageic.Food chem.. 48. 2559-2564 (2000)
• [文献書誌] Inagaki,M. et al.: "Evaluation of specific binding of Hprotein of φX174 with maltose-binding toward LPS"J.Biochem.Mol.Biol>biophys.. 4. 59-64 (2000)
• [文献書誌] Inagaki,M. et al.: "Characterization of the binding of spike H protein of bacteriophage with receptor LPS"J.Biol.Chem.. 127. 577-583 (2000)
• [文献書誌] Inagaki,M. et al.: "Recognition of receptor lipopolysaccharides by spike G protein of bacteriophage φX174"Biosci.Biotech.Biochem.. 64. 1993-1997 (2000)
• [文献書誌] 柏村直樹(編集): "生物資源を活用する新規な制がん剤の研究と三重県における内分泌撹乱物質の調査"三重県高等教育機関連絡会議. 555 (2000)