研究概要 |
細胞内小器官ペルオキシソームは真核細胞に特徴的な小器官で、脂肪酸の代謝やそれに伴って生成する過酸化水素の分解などを行い、ある特定の条件下でのみ細胞内に多数発達する誘導発達型の細胞内小器官である。パン酵母S.cerevisiaeはオレイン酸生育時にパルオキシソームの発達が見られ、この過程にはペルオキシソーム膜タンパクやマトリックスタンパクの合成ならびにそれらのパルオキシソームへの輸送、膜の発達・分裂といった重要な要素が含まれている。こういったペルオキシソーム形成に必要なペルオキシンと呼ばれる分子がいくつか報告されているが、これらの発現は、ペルオキシソームの発達過程におけるペルオキシソーム内の代謝に関わるマトリックスタンパクの発現と情報伝達系を一部共有していると考えられた。このペルオキシソーム形成の分子情報伝達を解明していくために、遺伝子発現調節が一部明らかになっているFOX3(チオラーゼ)とペルオキシソーム膜タンパクをコードするPEX11遺伝子の転写調節を比較した。レポーター遺伝子としてLacZを用いて調べたところ、FOX3は増殖と比例して転写活性が上昇したのに対して、ペルオキシソームの膜タンパクPEX11はある程度までは、転写活性が上昇したが、細胞の増殖の途中で平衡に達し必ずしも比例していないことがわかった。また、各種の情報伝達因子PIP2,ADR1,SNF1遺伝子破壊株を用いてPEX11やFOX3遺伝子への分子情報伝達の流れを解析したところ、上述の結果を示唆する情報伝達機構の違いが明らかになった。
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