研究概要 |
我々は有用な腸内細菌である乳酸菌が腸内に留まる"分子的な面からの細胞接着のメカニズムの解明"が必要であると考え、乳酸菌が細胞膜上の「糖鎖」を介して宿主に接着すると言う仮定のもとで研究を行って来た。その結果、乳酸菌(Lactobacillus属)もウイルスや病原性細菌と同様に糖脂質の「糖鎖」に結合し、さらに、乳酸菌の膜表層に"糖鎖を認識する受容体タンパク質"が存在することを見出した。本研究では、本タンパク質について、遺伝子クローニングと大腸菌における多量発現を試みた。即ち、Lactobacillus caseiのゲノムDNAを制限酵素Sau3AIで部分消化した後、ショ糖密度勾配で集めた10-15kbpのDNA断片を、Charomid 9-36ベクターのマルチクローニングサイトをBamHIで処理したサイトにT4DNAligaseを用いてライゲーションした。これをλファージにin vitroパッケージングした後、大腸菌DH5αに導入し、ライブラリーを構築した。次いで、N末端アミノ酸配列由来のオリゴヌクレオチドミクスチャー(20-mer,128・mix)をプローブとしてライブラリーをスクリーニングしたところ、いくつかのポジティブクローンを得た。そのうちのCH1と命名したクローンの制限酵素地図を作成し、再び同じプローブを用いたサザンブロティング解析によって陽性断片の位置を決めた。陽性断片の一つである3.0kb EcoRI断片をpUC18プラスミドを用いてサブクローニングした後、塩基配列を決定したところ、本受容タンパク質のN末端アミノ酸配列をコードするORFを見出した。本受容タンパク質は155アミノ酸残基からなることが明らかにされ、本遺伝子の産物は大腸菌においても発現することを確認した。
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