研究概要 |
ABCスーパーファミリー蛋白(ABC蛋白)は、MDR1,MDR2,MRP,MOAT,CFTR,SUR1,SUR2などであり、1分子内に12から18の膜貫通部位と2つのよく保存されたATP結合領域をもつ。これらは皆ATPによって駆動あるいは制御されるが、それらの機能はポンプ、フリッパーゼ、チャネル、チャネル・レギュレーターと多様である。本研究では、SUR1、SUR2、MDR1、MRPを精製し、それぞれのATP加水分解反応を比較することによって、ABC蛋白が細胞環境をモニターするシグナル分子としてATPをいかに利用し、あるいはATPによって駆動されているか解明を試みた。 まず、それぞれのABC蛋白のATP加水分解領域に変異を導入し、光親和標識できるヌクレオチドを用いて、ATP結合、ATP加水分解を検討した。その結果、2つのヌクレオチド結合領域は、独立にATPを加水分解するのではなく、厳密に協調しあっていることが明らかになった。つまり、片方が常に加水分解反応をし、もう片方が常に制御部位として働いているわけではなく、反応と制御を順番に行っていると考えられる。SUR1は、前半のヌクレオチド結合部位はMgATPを強く結合し、後半のヌクレオチド結合部位はMgADPを結合すること、2つのヌクレオチド結合部位は互いに協調して機能していることが明らかになった。さらにHis TagをC末端に融合したMDR1、MRP、SURを培養細胞内で大量発生させ、精製することに成功した。
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