研究概要 |
赤色酵母Sporobolomyces salmonicolor(AKU4429)の生産する、Ethyl 4-chloro-3-oxobutanoateを立体選択的にethyl(S)-4-chloro-3-hydroxybutanoateへ還元する酵素(ALR(S))をクローニングするため、まず本酵素のアミノ酸配列を解析した。N末端アミノ酸配列ならびにリシルエンドペプチダーゼで消化した6つの断片について、プロテインシーケンサーを用いて合計65残基を決定した。得られた配列をもとに2種類のプライマーを合成して、酵母染色体DNAを鋳型としてPCRを行った結果、特異的な断片が増幅した。次に、得られた断片をプローブとして用い、cDNAライブラリーをスクリーニングしたが、陽性クローンは得られなかった。そこで、染色体DNAライブラリーをスクリーニングした結果、陽性クローンが得られたので、DNAシーケンサーを用いて塩基配列を解析した。本酵素遺伝子にはイントロンが存在することが示唆されたので、染色体DNAの情報を元にプライマーを合成してRT-PCRを行い、ALR(S)のcDNAを特異的に増幅した。塩基配列を解析した結果、本酵素遺伝子は1,032bpから成り、344アミノ酸残基(分子量37,315)から構成されることが明らかになった。推定一次構造は、本酵母が生産する立体選択性の異なるアルデヒド還元酵素(ALR(R))を始めとする、アルド・ケト還元酵素ファミリーとは全く相同性が認められなかった。酵素の特徴をより詳細に検討するため、大腸菌を宿主とする高発現プラスミドを構築して、大腸菌から酵素を均一に精製して様々な性質を解析した結果、酵母から精製した酵素と全く同じ性質を示すことを明らかにした。また、染色体DNAのサザン解析を行った結果、ALR(S)とALR(R)は、互いの近傍には位置していないことが明らかとなった。
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