研究概要 |
2,5-ジケトピペラジン類(DKP)には側鎖のα,β位が脱水素された脱水素型DKPが存在し,我々も以前にcyclo(phenylalanyl-1eucine)(CFL)の両側鎖の脱水素体(albonoursin)を,放線菌Streptomyces sp.KO2388株の培養物より単離した。昨年度の研究で,本生産菌がCFLからalbonoursinへの脱水素反応を触媒する酵素系を有していること,本酵素系が無細胞抽出液中に安定に抽出されること,さらにCFL以外のDKP類も基質となり脱水素反応を受けることを明らかにした。本年度は本脱水素系の水素受容体としてphenazine methosulfate(PMS)が最も優れていることを明らかにし,PMS-DCIPを用いる本酵素活性の測定法を確立した。またCFLからalbonoursinへの脱水素反応が片側のアミノ酸が脱水素された中間体,すなわちcyclo(Leu-dehydroPhe)もしくはcyclo(dehydroLeu-Phe)を経て起こることを明らかとした。これら2種の中間体およびCFLがalbonoursinとは異なりウニ胚の受精阻害を示さなかったことから,生理活性発現には両側鎖ともに脱水素されていることが必須であることが明らかとなった。さらに,本酵素系を硫安分画とイオン交換クロマトグラフィーで精製したところ,CFLから片側脱水素体を経てalbonoursinへの合成を触媒する両分とCFLから片側脱水素体への反応のみを触媒する画分を分離することができた。このことから,CFLからalbonoursinへの脱水素反応は少なくとも2種類の酵素により触媒されることが判った。
|