タンパク質によっては、単なるポリペプチド鎖に翻訳されただけでは十分な機能を持たないが、翻訳後、様々な修飾を受けることによって初めてタンパク質としての機能を有するようになる。この様な翻訳後修飾の一つに、チロシン残基および糖鎖の硫酸化がある。タンパク質のチロシン残基および糖鎖の硫酸化は分泌タンバクにおいて主としておこり、タンパク質の分泌におけるシグナルとなるのではないかと考えられている。そこで、分泌タンパク質の細胞内輸送におけるチロシンおよび糖鎖の硫酸化の役割を研究する上で、硫酸化チロシンおよび糖鎖に特異的結合性を持つ分子量175kDaの膜結合性糖タンパク質を牛肝臓ミクロソーム膜画分において見いだした。この硫酸化チロシン残基および糖鎖に対して特異的に結合するタンパク質を硫酸化チロシンおよび糖レセプター(TyrS-Receptor)と呼ぶ。TyrS-Receptorは肝臓中で硫酸化チロシンおよび糖タンパク質と結合し、その細胞内輸送を媒介していると考えられている。TyrS-Receptorの機能として、生合成された新しい硫酸化チロシンタンパク質の運搬、または、外因性硫酸化チロシンタンパク質のエンドサイトシスが挙げられる。このTyrS-Receptorの研究を行うにあたって、遺伝子解析を行いアミノ酸配列を決定した結果、補体C3と非常に高いホモロジーを示した。また、抗TyrS-Receptor抗血清と抗補体C3抗血清を用いての交差性の検討の結果、この2つのタンパク質は同一のタンパク質であることが示唆された。このことより我々は、TyrS-Receptorはトランスゴルジネットワークからリガンドと共に輸送小胞中にパッケイジングされ、CURL小胞や細胞膜のような低pH領域でリガンドを解離した後、遊離の状態になったTyrS-Receptorは細胞外に分泌され、何らかの免疫機能を持つのではないかと考え、TyrS-Receptorの細胞内移動経路について考察した。
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