本研究は新規なフラクトキナーゼの発見を出発点に、酵素の基礎ならびに応用研究を行ったもので、平成9から10年度の研究成果は以下のとおりである。(1)臨床分析への応用:腎機能診断としてイヌリンをマーカーとする血液濾過機能診断法が世界的に認知されている。本酵素とphosphoglucoisomerase、glucose-6-phosphate isomerase共役下にイヌリンを測定する方法を開発。本法を臨床診断分析に応用して腎クリアランス試験を行い良好な結果を得た。本法は自動化分析にも対応する、世界で始めての高精度分析法である事を明らかにした。さらに本酵素を用いたアミラーゼ測定法の開発にも成功した。(2)構造と機能解析:精製タンパクのN末端26アミノ酸残基の配列を明らかにした。本配列からPCR用センスプライマー4種、アンチセンスプライマー3種を合成、酵素生産菌ゲノムDNAを鋳型にしてゲノムPCRを行った。ついで、精製増幅断片のサブクローニングし9クローンを得、挿入断片の解析から両端にプライマーの塩基配列が確認されるとともに、10アミノ酸残基に相当する30塩基配列も酵素N末端配列と一致、そのネイティブ配列を決定した。このネイティブ配列をブローブに酵素生産菌ゲノムライブラリーよりスクリーニングし、5000個中15個のポジティブクローンを得、サブクローニングの結果、全長11Kbpのプラスミドを得た。このプラスミドは約9Kbpの生産菌ゲノムを保有しており、プライマーより6Kbp→8Kbpの酵素構造遺伝子を有していた。このプラスミドをプライマーウォーキング法にて酵素OFR両鎖塩基配列を決定した。データベース検索の結果、この配列にホモロジーを有する既知配列はなかった。(3)組換え体の作成と発現:酵素組換え体の作成を試み、3クローンを得た。発現検討の結果、発現は確認されたがそのレベルは低かった。
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