研究概要 |
天然のポリフェノール中には,オルト・プレニル化フェノールに由来すると想定されるジヒドロフランやジヒドロピラン環状エーテル構造を有する化合物が少なくない.本研究は,ル-ピン類に広く見られる環状エーテル構造をもつイソフラボンのバイオジェネシスや,抗菌性プレニル化イソフラボンのカビによる同様の構造をもった解毒産物の生成様式と,生成過程を酵素レベルで明らかにしようとするものである.まず,後者について,既にハイイロカビ病菌の無細胞抽出液で,生菌による反応が再現されることが明らかにしていたので,酵素の特性の検討を行なった.その結果,1)酵素活性はマイクロソーム画分で比活性が最大であったが,可溶部の蛋白含量が大きかったため全活性の半分近くは可溶性画分に分布した.酵素反応生成物は,基質の二重結合部分がエポキシドに変換された化合物と確認された.2)粗酵素反応で,反応生成物に新たに加わる酸素は,水からではなく,二原子酸素に由来することから,本酵素はモノオキシゲナーゼに分類された.3)補酵素の水素供与体はNADPHが有効で,NADHでは10%ぐらいの反応生成物しか与えなかった。4)NADPHが十分存在する条件下に,少量のFADはその反応速度を2倍に増加させ,そのときNADHの水素供与体としての効果は,NADPHの約50%であった.5)本酵素は,モノオキシゲナーゼであることは確かであるが,通常のP_<450>阻害剤には感受性を示さず,最大活性がFADによって発揮されることから,FAD依存のモノオキシゲナーゼと結論された.さらに,基質特異性を検討するとともに,本酵素が基質類似体によって誘導生成されることを証明した.本酵素の反応生成物あるいはそれから非酵素的に生成する環状エーテル類は,ル-ピン中に各種みいだされているので,次のステップとしてル-ピン中に灰色カブ病菌と同様の酵素活性が見られるかどうかを検討する必要がある.
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