基質との構造類似体である6-prenylnaringeninで20時間順養したBotrytis cinereaの粗抽出物は7-O-methyl-luteoneのプレニル基をエポキシ化する活性を誘導的に発現した.この反応は分子状の酸素(O_2)とNADPHに依存した.少量(1μM)のFADの存在により活性は二倍以上に増大し、NADHの水素供与体としての効果が著しく上がった.本酵素活性はCOやcytochromecも含め使用したcytochrome P-450阻害剤によっても阻害を受けなかったことから、通常のcytochrome P-450 monooxygenaseではなく、FAD依存のmonooxygenaseのグループに属するものであることが判明した.粗抽出物の約半分の酵素活性がミクロソーム画分に見られ、比活性は可溶性画分の3.7倍であった.本酵素はプレニル基の位置に対しては特異性が小さかったが、プレニル基の二置換物に対しては反応性を示さなかった.以上のようにFAD依存のプレニル二重結合エポキシ化酵素の部分的属性を明らかにすることが出来た.適応的に活性を発現し、生成物の抗菌活性が大きく低下することから、植物病原菌にとっては植物の防御物質に対して抵抗的に機能し、腐生生活をする微生物にとっては二次代謝産物に対する一般的な耐性あるいは分解代謝のために役立っているものと予想される.プレニル基を特異的にエポキシ化するこの種の酵素は、他に例が知られていないが、植物の二次代謝においてプレニル化フェノールの環状エーテルや二価アルコールへの変換に関与している可能性は少なくない.本酵素の機能あるいは二次代謝における位置付けを鮮明にする目的で、研究の一環としてフラボノイドの微生物代謝に関する総説を取りまとめた.その中で、本研究の背景についてほぼ十五年間にわたる研究の経過をたどると共に、関連研究との対比を行い、本研究課題の中心である、エポキシ化酵素の二次代謝における意義などについても議論した.詳細は、冊子体報告書に述べられている.
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