研究概要 |
スクアレン及びオキシドスクアレン閉環酵素認識について酵素及び基質アナログの両面から研究の展開を図り、以下の研究成果を得た。 1. 酵素化学的展開 (1) スクアレン-ホペン閉環酵素を遺伝子工学的手法を用いて大量発現し、部位特異的変異導入を行い、活性部位の特定を試みた結果、従来活性部位と考えられてきたQWモチーフは実際は活性部位ではなく、QWモチーフ4及び5は酵素の熱安定性に機能することを解明した(Biosci.Biotech.Biochem.1998,Vol.62.pp.407-411;1999、Vol.63.印刷中)。 (2) W169F.W169H及びW489Fの変異により、そのアミノ酸が活性部位であることを証明でき、また、これらのmutantsが部分閉環したdammarene骨格をもつ新規物質を生産することから、D環形成は5員環から6員環へと環拡張する新しい機構を提出できた(J.Chem.Soc.Chem.Commun.pp2617-2618,1998)。 2. 基質アナログの化学合成と酵素反応生成物の同定一酵素反応メカニズムの解明 (1) オキシドスクアレン閉環酵素(ラノステロール合成酵素)については、天然基質の中央部のメチル基をホモメチル基(エチル基)に置換して酵素反応を行い、生成物を同定した結果、本酵素反応は長年アンチマルコフニコフ則に従って進行する信じられてきたメカニズムに異論を唱える結果となり、本酵素反応は実際は熱学的に安定なマルコフニコフ則に従って進行し、その後環拡張する新しいメカニズムを提唱できた(J.Chem.Soc.Chem.Commun.pp 1591-1592(1998). (2) スクアレン閉環酵素の基質認識-好熱好酸性菌A.acidocaldarius及び原生動物T.pyriformisの閉環酵素基質アナログとしてノルスクアレンを合成し、両者の閉環酵素と反応した結果、末端メチル基の認識機構が解明できた。両酵素の相違点は前者が5員環生成を、後者は6員環生成を触媒するが、5、6員環生成を制御しているのは、末端メチル基に存在していることを突き止めた。即ち、6員環生成は酵素的制御というよりも、化学的制御(非酵素的)に基づいており、一方5員環生成はメチル基を強く分子認識して熱力学的に不安定なコンフォメイションに導いていることを証明できた(投稿中)。
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