研究概要 |
茶の香気生成酵素β-ブリメベロシダーゼおよびその基質となる二糖配糖体のその他の植物体における分布と存在意義の総合的理解に向けての基礎を築くことを目指し,アフィニティークロマト用吸着体の調製に引き続き取り組んだ。前年度の知見から,高度に選択的なアフィニティーの発現は容易でないことが判明し,リガンドのデザインを基本的に見直して研究を行った。 1. β-プリメベロシダーゼ精製用アフィニティークロマト用吸着体の調製 1-アミノ糖を修飾してスペーサーと結合して,修飾されたCe11urofine等の支持体と結合するという基本V構想に基づき,以下の方法を試みた。 (1)β-D-Glucopyranosylamine(1)およびβ-primeverosylamine(2)の合成リガンドとして用いるPrimeveroseは酵素合成によって得たもので貴重なため,より効率的な1-アミノ糖の合成法を確立した。50%メタノール性アンモニア中に密封(40℃,3日間)後,アンモニアを蒸発させると白色結晶が析出した。NMR分析によりいずれも100%β体であることを確認した。 (2)1-アミノ糖(1および2)のsuccinic acidおよび3,3-dimethylglutaric acid誘導体の合成 β-D-Glucopyranosylamineまたはβ-primeverosylamineとDMF中ピリジンの存在下で無水コハク酸あるいは無水3,3-ジメチルグルタル酸と反応させて,それぞれの酸誘導体を得た。 (3)1アミノ糖(1および2)のamidine誘導体の合成 イミドエステルは温和な条件下でアミンと反応しamidine塩を与える。本化合物はanomeric carbon近傍にカチオンを生じ,グリコシダーゼの遷移状態に近い構造となり,酵素との親和性が期待される.Benzylcyanideからethylphenylacetimidate hydrochlorideを合成し,1-アミノ糖(1および2)と反応してamidien塩を合成した。(4)アミノ糖およびそのコハク酸誘導体のチャ葉由来のグリコシダーゼ阻害活性 やぶきた種の粗酵素から部分精製したグリコシダーゼのpNP-glucosideあるいはpNP-primeverosideを基質としたときの上記の化合物の阻害活性を測定した.1-アミノ糖はいずれも期待通り阻害活性を示したが,アシル化物はいずれも阻害活性を消失していた.amidine塩の阻害活性を測定中である。 現在,これらのリガンドのセルロファインへの結合を検討中である。
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