1. 本年度の研究成果 1) 太陽虫の大量培養: 殺ワムシ活性物質の起源である太陽虫を逐次培養し抽出材料の確保を試みた。しかしながら太陽虫の毒性が著しく低下したため太陽虫をワムシ培養液に曝すなどして太陽虫の毒性上昇を図った。これまでのところ以前の数十分の一程度の毒性を持つ太陽虫しか得られておらずこれが本研究遂行上大きなネックとなっている。 2) 殺ワムシ活性物質の精製: 光照射下でのArtemiaに対する致死活性を指標にして各種カラムクロマトグラフィー、HPLCで致死物質を精製した。昨年度までに致死活性を示す画分はいずれもクロロフィル類似の紫外・可視スペクトルを与えることを明らかにしてきたが、活性の高い画分ほと不安定であり致死活性物質の単離には困難をきわめている。さらに精製を進める過程で、クルロフィル類とは異なる色調を有し、かつ紫外・可視スペクトルから力カロテノイド類縁体と考えられる複数の物質を含む致死活性画分を得た。これらも不安定であり、かつ超微量であるため単離には至っていない。 3) 上記の成果を1999年度日本農芸化学会大会(福岡)にて発表予定である。 2. 今後の課題と展望 本研究を進める上で二つの大きい課題が顕在化した。一つは材料の確保、二つ目は目的物質の安定性である。これらはある程度当初から予想されはしたが、生理活性天然物化学的研究の根幹に関わる問題である。今後は毒性の高い太陽虫の大量培養に注力し、致死物質が微量かつ不安定であることを踏まえて迅速な精製、単離を目指す。
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