研究概要 |
私達のグループは約5年前にBipolaris sorokiniana OB-25-1株が新規な植物毒sorokinianinを生産すること明らかにした.この毒素はセスキテルペンであるprehelminthosporolにC3単位が付加した構造の化合物であった.これまでに安定同位体標識した酢酸やコハク酸の投与実験,置換培養実験などが行われ,得られたデータからこのC3単位がTCA回路の酸由来であることが証明された.TCA回路の酸の中ではコハク酸,フマル酸,リンゴ酸,オギザロ酢酸等がC3単位の直接の生合成前駆体と考えられる。もし,酵素18標識したリンゴ酸の投与実験を行い,sorokinianinの2'位の水酸基が標識されるかされないかが分かれば,直接の生合成前駆体がコハク酸とフマル酸のグループ,リンゴ酸とオギザロ酢酸のグループの2つのグループのうちのどらかであるかが証明できよう.しかし,残念なことに,酢酸18標識したリンゴ酸は市販されていない. そこで,今年度は,C3単位の直接の生合成前駆体を解明する研究の第1段階として,先ず酸素18で標識したリンゴ酸の調製を試みた.酸素18で標識した水(標識化率95%)中で,フマラーゼによるフマル酸からリンゴ酸の変換を試みたところ,標識されたリンゴ酸が約30%の収率で得られ,得られたリンゴ酸の標識化率は,FABMSの測定結果より85%と算定された.また,sorokininaninのアセチル化物を調製し,その高分解能質量分析とリンクドスキャンを行い,C_<22>H_<32>O_6(M^+)→C_6H_7O_4→C_4H_<32>O_2の開裂パターンを明らかにした.この結果より,酸素18標識リンゴ酸の投与後,単離されたsorokinianinをアセチル化して質量分析を行えば,sorokinianinの2'位の水酸基が標識されたかどうかが判定できることが分かった。
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