大麦アリューロン細胞を用いて、植物ホルモンの受容体の解析と植物ホルモンの作用に阻害的に作用する化合物の合成及びその作用部位についての解析を、併せて開発したセルソーターを用いた植物ホルモン受容体解析手法を用いて行った。まず、植物ホルモンの受容体解析を目標としたビオチン標識化アブシジン酸の合成を4'位にスペーサーを導入することにより行った。この化合物はジベレリンにより誘導されるα-アミラーゼ合成の阻害活性及びアブシジン酸により誘導されるデヒドリンの誘導活性を示すというアブシジン酸と同様の活性を有していたことより、アブシジン酸受容体に作用していることが示唆された。続いてこのビオチン標識アプシジン酸とアリューロン細胞プロトプラストとの相互作用を、蛍光標識アピジンのビオチンへの親和性を利用して、フローサイトメーターを用いて解析した。その結果、アブシジン酸受容体が細胞膜上にあることも示すことができた。またこの解析法を用いることにより、ビオチン標識アブシジン酸結合部位(アプシジン酸受容体)に拮抗的に作用している可能性のある化合物を見出すことができた。さらにカルシウムチャンネル阻害剤のビオチン誘導体を合成し、植物ホルモンの場合と同様の解析を行い、カルシウムチャンネルが細胞膜上にあることも示すことができた。また蛍光標識アブシジン酸・ジベレリンを、アブシジン酸やジベレリンのモデル化合物として用いて、細胞内での局在について検討したところ、液胞へと輸送されることが明らかとなった。また単離した液胞を用いて検討したところ、液胞内への取り込みにはATPが必要であることから、いわゆるABCトランスポーターにより液胞内へと輸送される可能性が示された。 以上、標識化した植物ホルモン誘導体が植物ホルモンの作用部位や蓄積部位を調べる上で有用であることを明らかにした。
|