研究概要 |
平成9年度までに,ウマ,ヒツジ,ウシ,シカの乳汁に於いて分娩前から常乳期に至るまでのシアリルオリゴ糖パターンの解析を行った。分娩直後の乳では3'-N-アセチルノイラミニルラクトースが多いが3日目以降急激に減少し,7日目以降の乳では他のオリゴ糖と同程度の量まで低下することを示され,シアリルオリゴ糖は泌乳時期の異なる乳で均一ではなく,泌乳時期に応じて顕著な変動をすることが示された。 平成10年度はウマ,ヒツジ,ウシ,イヌなどの乳中において,シアル酸や硫酸基などの酸性基を有するオリゴ糖についての構造解析を行った。ヒツジ乳からは,3'-N-アセチルノイラミニルラクトース,3'-N-グリコリルノイラミニルラクトース,3'-N-グリコリルノイラミニルラクトース,6'-N-グリコリルノイラミニルラクトースおよび3'-N-グリコリルノイラミニルラクトースのN-グリコリルノイラミン酸のカルボキシル基とインターナルガラクトースの2位または4位でラクトン環を形成した3'-N-グリコリルノイラミニルラクトース1-2ラクトンおよび1-4ラクトンが存在していた。また,ウシ初乳中にもこれまで報告されていなかった3'-N-アセチルノイラミニルラクトースのラクトン誘導体が含まれていることが明かとなった。ラクトン体はノイラミニデースに対する抵抗性を持つことから,乳児のウイルス感染の防御因子として乳中に存在している可能性が示唆される。 また,他の酸性糖として,ウマ乳からはグルコサミンの1位がリン酸化されたラクトサミン-1-リン酸が,イヌ乳からはガラクトースの3位が硫酸化されたラクトース-3'-硫酸が存在することが明かとなり,これらが主要酸性糖として存在していたことから,何らかの生理機能を有しているものと推察された。
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