肥満遺伝子産物レプチンの発見により肥満の分子レベルでの研究は急速に発展しつつある。しかしながら、レプチンの食欲調節作用については、一部は視床下部における食欲促進因子である神経ペプチドY(NPY)を介すると推定されているが、レプチン受容体以降の経路は未解明である。本研究では食欲調節の機構を分子レベルで解明すること、特に新規な食欲調節に関与する遺伝子を見いだすことを目標とし、まずレプチンの標的分子の特定を試みた。絶食させたラットにレプチンを投与し、10時間後の視床下部のCa^<2+>/calmodulin応答をコントロールと比較したところ、レプチン投与ラットでは見掛け上この応答が消失していることが明かとなった。この原因としてはCa^<2+>/calmodurlin依存的なキナーゼやホスファターゼの変化が考えられるので、今後詳細に検討してゆきたい。また、必須アミノ酸を一種類だけ欠いた食餌を与えたラットは顕著に食欲低下を示すが、これはレプチンの作用でないことを既に見出している。この現象に関与する遺伝子を取得するために必須アミノ酸であるトリプトファン、リジン、メチオニンをそれぞれ除いたアミノ酸混合食をそれぞれ与えたラット小腸及び脳よいmRNAを調製し、アミノ酸完全食摂取ラットを対照としてdifferential display法を行った。その結果、必須アミノ酸欠乏食摂取により発現が変化する3種類のクローンが得られた。現在これらのクローンのmRNA全長を取得中である。
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