肥満遺伝子産物レプチンは多数の食欲調節因子の発現、分泌を変化させることにより摂食調節作用を発揮すると考えられているが、レプチンが視床下部の受容体に結合後、どのように作用を発揮するのかについては未解明な点が多い。本研究では食欲調節の機構を分子レベルで解明するために、新規な食欲調節に関与する遺伝子を見いだすこと、またレプチンの機能解明のためにその作用を修飾する新しい因子を見出すことを目的とした研究を行い、以下の成果を挙げた。 1) アミノ酸欠乏食投与ラットにおける脳腸ペプチドの挙動 ラットに必須アミノ酸が1種類だけ欠乏した食事を与えると顕著な食欲の低下が引き起こされることは既知の事実である。このときの摂食行動に関与する脳腸ペプチドの遺伝子発現を検討したところ、小腸におけるコレシストキニンの遺伝子発現がトリプトファン、リジン欠乏食摂取ラットで低下していることが判明した。また、小腸において分泌が変化するペプチドの検索を行ったところ分子量約4000のペプチドが変化していることが判明した。 2) Differential display法による新規節食調節因子の検索 必須アミノ酸(リジン、メチオニン、トリプトファン)欠乏食摂取ラットの脳及び小腸において発現が変化している遺伝子の検索を行った。その結果、3種の新規遺伝子を取得し、詳細については現在解析中である。 3) レプチンと相互作用する物質の検索 生体分子間相互作用解析装置(表面プラズモンバイオセンサー)を用いて、レプチンと相互作用する物質の検索を行った。微生物培養物約300種について検索した結果、ある種のカビより活性物質を単離し、それがリノール酸であることを明らかにした。さらに各種脂肪酸を用いて構造-括性相関を検討したところ、レプチンとの相互作用には鎖長と2重結合の数が重要であることがあきらかとなった。
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