L一アスコルビン酸の生体内抗酸化機構と生理効果

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09660133
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: お茶の水女子大学
• 研究代表者: 倉田 忠男 お茶の水女子大学, 生活環境研究センター, 教授 (60011920)
• 研究分担者: 鈴木 恵美子 お茶の水女子大学, 生活科学部, 助教授 (80154524)
• キーワード: L一アスコルビン酸 / ビタミンC / 生体内抗酸化機構 / 生理効果 / 計算化学 / 自動酸化機構

研究概要

ビタミンC、すなわちL一アスコルビン酸(L-Ascorbic Acid、以下AsAと省略)は人間に必須の微量栄養素であり、抗壊血病作用のほか、コラーゲンの生合成、芳香族アミノ酸の代謝、脂質代謝、免疫能・細胞増殖作用の賦活化等々の重要な生理作用に関与していることは広く知られている。AsA分子の有する生理効果の詳細についてはまだ不明の点が多く残されている。AsAの生体内における抗酸化ビタミンとしての生理効果が重視されるにつれて、その生体内抗酸化機構と生理効果との関連をより明確にするための試みがなされるようになってきたが、この両者の正確な相互関係については現在なお明確にされていない。AsAの生体内における抗酸化機構と、生理効果の発現過程との関連を明らかにするため、その第一段階として、モデル酵素反応系における両者の関係について実験化学的及び計算化学的手法による詳細な検討を行うことにした。まず、AsA(L-キシロ-AsA)およびその関連物質(D-キシロ-AsA、Lアラボ-AsA、D-アラボ-AsAなど)の内、市販されていない入手困難なものの合成を試み、さらにそれらの酸化型の合成についても検討した。AsA及びその関連物質(各物質の酸化型も含む)について半経験的分子軌道法(主としてMOPAC VER6.0)による計算を行い、各分子の動的構造に関連する情報[最適化された立体化学的構造(平衡構造)、各原子上の電子密度、双極子モーメント、生成熱、各分子軌道の形状やエネルギー等をも含む]を求め、それらに基づき、それぞれの最適化された動的構造につき検討した。また、上記AsA及びその関連物質について、酸素分子(3重項および1重項)との反応過程について計算化学的な追究を試みた。さらに、実験化学的にそれらの自動酸化反応生成物の確認をHPLC等により試みた。

研究成果

• [文献書誌] N.Miyake, T.Otsuka, T.Kurata: "Autoxidation Reaction Mechanism for L-Ascorbic Acid in Methanol without Metal Ion Catalysis." Biosci.Biotech.Biochem. 61・12. 2069-2075 (1997)
• [文献書誌] E.Suzuki, T.Kurata, M.Mori, N.Arakawa: "Effect of L-Xyloascorbic Acid and Its Stereoisomers on the Activity of Dopamin β-hydroxylase." J.Nutr.Sci.Vitaminol.43・5. 491-496 (1997)
• [文献書誌] N.Miyake, M.Kim T.Kurata: "Formation Mechanism of Monodehydro-L-ascorbic Acid and Superoxide Anion in the Autoxidation of L-Ascorbic Acid." Biosci.Biotech.Biochem.61・10. 1693-1695 (1997)
• [文献書誌] M.Nakamura, T.Kurata: "Effect of Ascorbic acid and superoxide Anion Radical on the Rheological Properties of Wheat Dough." Cereal Chem.74・5. 651-655 (1997)
• [文献書誌] M.Nakamura, T.Kurata: "Effect of L-Ascorbic acid on the Rheological Properties of Wheat Dough." Cereal Chem.74・5. 647-650 (1997)