ビタミンC(アスコルビン酸:以下AsAと略す)の今までに知られていない生理機能を探求することを目的として、遺伝的にAsA合成不能のODSラットを用いて実験を行っている。ODSラットに、外見上はAsA欠乏症状が見られない14日間のAsA欠乏飼料の投与を行ったところ、急性期タンパク質として知られるハプトグロビン(HP)およびα1-酸性糖タンパク質(AGP)の血中濃度が上昇し、肝臓のこれらのmRNAレベルが有意に上昇していることを見いだした。これらのAsA欠乏による変化は、炎症時に見られる急性期応答と同様のものである。急性期には、肝臓のアポリポプロテインA-I、アルブミン、α2u-グロブリンの発現が減少することが知られており、AsA欠乏のODSラットでもこれらのmRNAレベルが低下していることを確認した。これらのAsA欠乏時での変化の機構を考える上で、急性期には炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1の生合成が上昇して肝臓の急性期タンパク質の発現を誘導することに注目した。HPやAGPの遺伝子の上流にはこれらの炎症性サイトカインに対する応答配列が存在する。AsA欠乏のODSラットにおいて、B9細胞を用いたバイオアッセイにより血中のIL-6濃度を測定したところ、対照群に比べて有意に上昇していた。また、他の可能性として、 HPやAGP遺伝子はその上流にグルココルチコイド応答配列も有していることから、AsA欠乏のODSラットにおいて血中のグルココルチコイド(コルチコステロン)濃度を測定したところ、やはり上昇が観察された。現在、血中のIL-6濃度の上昇を引き起こしているのは、どの臓器におけるこの遺伝子の発現の上昇かについて解析を進めている。また、グルココルチコイドは副腎で産生されるため、副腎を除去したODSラットでの、AsA欠乏によるHPおよびAGPの発現の変化について解析している。 補助金により購入した生物顕微鏡は、AsA摂取群とAsA欠乏群との肝臓および副腎の組織学的変化を観察するために有効に利用している。
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