遺伝的にアスコルビン酸(ビタミンC:AsA)を生合成できないODSラットを用いて、肝臓での急性期タンパク質の発現が、AsA欠乏時に炎症時と同様に変動することを新規に見いだした。この現象は今までに報告されておらず、AsAの新たな生理機能と考えている。具体的には、体重減少が引き起こされない、初期のAsA欠乏状態において、肝臓のハプトグロビン、α1-酸性糖タンパク質遺伝子の発現は亢進し、アポリポタンパク質A-1、α2u-グロブリン、アルブミン遺伝子の発現が抑制された。これらのタンパク質は分泌タンパク質であるが、血中のこれらの濃度も、肝臓での遺伝子発現の変化と同様に変動した。この5種類のタンパク質は急性期タンパク質であり、炎症誘発時に変動する典型的なタンパク質である。そして、AsA欠乏時の変動は、炎症時の変化と一致していた。我々はこの結果から、AsA欠乏状態は、炎症状態の類似した一面があると推定している。これらの急性期タンパク質の発現の制御因子の一つとして、炎症性サイトカインとして知られるインターロイキン-6がある。上記の、AsA欠乏状態のODSラットにおいては、血中のインターロイキン-6の濃度が、正常時の5〜10倍に上昇していた。そして、様々な組織でのインターロイキン-6mRNAレベルを測定したところ、AsA欠乏群で上昇が観察された。この結果から、AsA欠乏による急性期タンパク質の発現変動の機構の一つとして、インターロイキン-6による急性期タンパク質遺伝子の発現誘導が考えられた。しかしながら、AsA欠乏によって遺伝子発現が抑制される急性期タンパク質については、その機構を明らかにすることはできなかった。 我々がこの研究を進め、結果を報告する中で、国外のグループによってヒトにおいても血中のAsA濃度と、インターロイキン-6濃度およびハプトグロビン濃度とが負に相関することを報告された。この報告より、我々がODSラットで見いだした現象は、動物種を越えて共通したAsA生理機能であると考えている。
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